【インタビュー#8】「未経験からの挑戦」×「スタイル」
【インタビュー#8】「未経験からの挑戦」×「スタイル」

YOSHISHIRO SAKURAI さん
柔術歴2年半。現在青帯。
得意技:アームロック、腕十字返し
練習頻度:週2〜3日
職業:動画広告プロデューサー、輸入販売
年齢:51
柔術以外のスポーツ経験:サーフィン、ラグビー、柔道、空手
柔術を始めたきっかけを教えてください
サクライ:サーフィンを32年続けていますが、それまでにしたことがなかった怪我をし始めたり、体が弱ってきたと感じる時期がありました。年を取るにつれて体が動かなくなるのも嫌ですし、もっと体を強くしたいという思いから始めました。
これまでもコンタクトスポーツの経験をお持ちですが、なぜ柔術だったのでしょう?
サクライ:長年親交があるプロサーファーのジョエル・チューダーさんが、以前から強く勧めてくれていたんです。「柔術はフィジカルを強くしてくれるし、しなやかな身体になる。だから年齢を重ねてもしなやかな動きができる」とよく話してくれました。年を取ってくると、頭の中のイメージが実際に体の動きに表現されるまでの感覚が鈍くなりますよね。「柔術はそのタイムラグをどんどん短くしてくれるし、反応も速くなる。サーフィンにも役立つからやるといい。ヨシもきっとはまるよ」って。
実際に体験してみたら「こんなに夢中になって体を動かせるなんて、おもしろいな!」と、すぐに入会しました。
柔術を始めたことは、ジョエルさんにお話されましたか?
サクライ:はい。青帯になった時にも連絡しました。そしたら「青帯になるのが一番難しい。よくやったな」って。今年は青帯と柔術着を持って、彼のジムに出稽古に行こうと思っています。

三人のプロサーファーを生み出した “コンディショニング”
サーフィンといえば、サクライさんのお子さんもサーフィンをされているそうですね。
サクライ:17歳の双子の息子がいまして、僕がずっと二人のサーフィンを見てきました。昨年、その二人が同時にプロになりました。
プロサーファーを育て上げられたのですか。しかも同時に二人!
サクライ:実は他に僕が見ている40代の男性が一人いるのですが、彼も息子たちと同じ大会でプロになりました。ずっとプロトライアル(プロサーファーになるための大会)をクリアできなかったのですが、僕が具体的なコンディショニングやコーチングをしたところ、昨年ついになることができたんです。僕が見ていた三人が、一大会で同時にプロになっちゃったんです。
一度に三人のプロを生み出されたとは。
サクライ:僕も若い頃にはプロアマ問わずサーフィンの大会に出ていて、勝ったり負けたり色々ありました。その経験から、今回プロになった三人に対しては細かくコンディショニングしたんです。睡眠、相手のことをよく見る、場所に慣れるといったことから、サーフボードなどの荷物や飲み物なんかも一切持たせなかったですし、宿を会場近くに手配してサーフィン後に外でも温かいシャワーが浴びられるよう準備したり。
「伝え方」も大事にしていました。ひとつのことを教える場合も三人に同じように伝えるのではなく、「彼にはこう言おう、彼にはこういうことは言わないでおこう、彼にはこれを言わないとダメだな」と、三者三様にしていました。
奔走しましたし難しいこともありましたが、おもしろかったです。結果を出すにはコンディショニング。これに尽きると思います。
サーフィンと柔術の共通点
サクライ:柔術とサーフィンって、似ているところがあります。どちらも「スタイル」が確実に出るんです。プレイを見ていると、「その人が今までどこで何をしていたか、今何をやっているか、この先何を目指しているか」って、なんとなくわかりませんか? 坪井先生のスタイルは、明確なんです。僕は現段階で柔術よりサーフィンの理解の方が深いですが、それでもそう感じます。
ですので、柔術を始める時に決めたのが、青帯になるまでは坪井先生のクラスだけを受けるということ。カルペディエム鎌倉・大船の代表は坪井先生ですので、まずは坪井先生の目を通した柔術をしっかり学び、先生の目に適うことを軸にしていました。

サーフィンで培ってきた「スタイル」は、柔術でも柱になっているんですね。
サクライ:今って、サーフィンでも柔術でも、あらゆる情報が溢れていますよね。その中から何を得て何を捨てるかという選択は自分のセンスになります。自分にフィットするもの・しないもの、自分のやりたいことの方向性を具体的にわかっておかないと。それこそ「スタイル」が大事です。テクニック動画などを見ることもありますが、コンセプトや伝え方が坪井先生と通じるものだけを参考にするようにしています。
でも、「これだ」と思って取り組んでも、向き不向きがあったり早々に壁にぶつかることもありますよね。「スタイル」って、そんなに簡単ではないのかもしれません。
サクライ:息子たちには「ある程度結果を出してからじゃないと、スタイルは変えちゃだめだよ」と言っています。というのも、その時々でスタイルを変えて、うまくいかなかった人をたくさん見てきたんです。変える前に、しっかりとしたベース、基礎をつくり、目指すそのスタイルを突き詰めてきたかそうでないか、納得の度合いをしっかり見極める必要があります。それが難しいんですけどね。でも、時間がかかってもスタイルを貫き通して結果が出せたら、それだけの価値が生まれるはずです。
人生も同じかもしれません。時間との付き合い方とでもいうのでしょうか。20代だけで人生が終わるんだったら、華やかなほうがいいかもしれない。でも実際はそうじゃない。50歳を過ぎてこれまでの人生を振り返ってみても、華やかじゃない時期の方が長いわけですよ。人生は長いし、柔術もサーフィンも上達するには時間が掛かるので、練習を繰り返し、“今を生きる”。そういう意味でも、長い目で見ないと「スタイル」については語れないのかもしれませんね。
三つの夢
サクライ:柔術を始めた時の最初の夢は青帯になることで、この夢は2022年に叶えることができました。次の夢は「60歳になった時にどれくらい黒帯に近づけているか」。柔術を始めようと思った時、年齢も年齢だし、結構躊躇したんですよ。それでも、思い切ってやってみて良かったです。あと8年かけてどこまで行けるかが楽しみですし、ひとつの挑戦です。

さらにもうひとつ、夢があります。それは「ジョエルをここに呼んで、坪井先生とのマッチアップを組む(笑)」。ジョエルは柔術でもグラップリングでもチャンピオンになって、確かグレイシー柔術の黒帯も最短で取っているんじゃないかな。二人の師匠のマッチアップなんて、それこそ夢のように楽しみじゃないですか! そうでなくとも、普段僕が練習をしている大船スタジオに彼が来てくれたら、とても嬉しいですね。
二人の師匠のマッチアップが実現するその日に、サクライさんも黒帯になっているかもしれませんね!
サクライ:いやいや! 柔道・空手経験を踏まえても、柔術の黒帯はすごく難しいと思います。知れば知るほど深いです、柔術は。でも1~2年だけ集中してやってパッと終わるにはもったいなさすぎる競技だと思いますし、細く長く、ケガをしないように続けたいですね。坪井先生の様な、しなやかで流れる様な柔術を目指していきたいです。